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第3章 考え・感情を生むもの
生き方の再考
前章までの内容は、次の図のようにやり方・思い方・考え方ばかりを頑張ってやってきたけど、
何が考え・感情を生んでいるのかが解らなかったという意味でもあります。
人の話の聞き方、企画書の書き方、話し方など、様々なハウツー本がカバーする「やり方」を変えてみようとしてみたり、
ポジティブシンキング、引き寄せの法則、成功する人の考え方など、様々な思想・哲学が教える「思い方・考え方」を
真似しようとしてみたり、努力もしてきたけれど、それで本当に望む成果は出るのでしょうか?
いくら素敵な笑顔と話し方が出来ても、心のこもってない言葉はすぐにバレてしまいます。
見た目が綺麗な企画書も、中身が伴わなければボツにされます。
ポジティブに考える習慣ができても、大切な人を亡くしたり、大きな悩みを抱えたときには役に立ちません。
思想・哲学や信仰に厚い心があっても、本心からそう思えないときだってあります。
これまでの人間の生き方は、このやり方・思い方・考え方を変えることで
自分の望む結果を出そうとする生き方でしたが、それだけでは思うようにいかなくて、
自分の考えや感情がどこから来るのかも分からないという限界がありました。
この表層しか見ない古い生き方をやめて、在り方の伴った「新しい生き方」にシフトチェンジしていきましょう、
というのが1つ目の提案です。
在り方のない「古い生き方」から在り方の伴った「新しい生き方」へ。この「在り方」とは
“認識から生まれるアイデンティティー”ということもできますが、要は自分自身をどう思うのか?ということです。
前章では認識の重要性についてお話ししましたが、“自分以外の存在”に対する認識もさることながら、
“自分自身”に対する認識が実は最も大きな影響力を持っているのです。その例を具体的にみていきましょう。
自分自身をどう思うのか
あるとき、会社でいつも明るく仕事をしていたAさんが、すごくやる気をなくしていたことがありました。
どうしたのかと思って話を聞いてみたところ「上司は、私のことが嫌いだと思う」と言うのです。
何故そう思うのか尋ねると、Aさんは「この前、上司に頼まれた書類を提出したら、注意されたんです。
Bくんは同じような仕事をして褒められてたのに。」「隣のBくんはいっつも早く帰る。私はいつも
遅くまで仕事を頑張ってるし、Bくんよりいい仕事をしている自信はあるのに・・」ということでした。
実際どうなのか、事実をその上司に確認してみたところ「あぁ、Bくんね。彼ね、怒るとすぐに
落ち込んじゃって仕事にならないから、いっつも褒めてないといけないんだよねぇ。
それに比べてAさんは頑張り屋さんだし、見込みがあるから期待してるんだよ。
成長してほしいと思って、ついつい厳しいことも言っちゃってるかも知れないけど。」と言われ、
「嫌われている」というのはAさんの思い込みだということが分かりました。
それをAさんに伝えたところ「えっ、私って嫌われてたんじゃなくて、期待されてたんですか?」と
急に顔が明るくなり、それからは以前と同じように明るく仕事をするようになりました。その結果、
2年後にはポジションも1つ上がって年俸もその分増えています。
もしAさんが「私は嫌われている」と思い込んでいたままだったら結果は違っていたでしょう。
「自分自身をどう思うのか」というアイデンティティーの認識は、2年後のポジションや給料に影響するばかりではありません。
良くも悪くも、これからの人生すべてに影響していきます。逆に振り返ってみれば、今現在の自分自身を形成しているのは、
数年前の自分自身でもあります。その数年前の自分も、さらに昔の自分が「私はこういう存在だ」と思い込んだ
アイデンティティーの上に形成してきたのだとすれば、遡れば遡るほど、幼少期の頃から積み重ねた自分自身に
対する認識が、自らの人生を形作ってきたといえます。よく「3つ子の魂100まで」と言いますが、
だいたい0歳〜6歳までに作られた心の癖が、その人の性格を形成し、100歳になるまで影響を与えると言われています。
この根深いアイデンティティー(自分自身をどう思うのか?という認識)をより詳しく観ていくと、
変化するアイデンティティーと変化しにくいアイデンティティーがあることが分かります。
例えば「○○商事の部長」など、所属する会社や組織と肩書は、転職したり退職することによって失ったり変化しますし、
交通事故における「被害者」と「加害者」のように、そのときどきによって相対的に決定されるものもあります。
出身地や性別などは、途中で変わる人も居ますが、一般的には変化しにくいアイデンティティーです。
人は普段いくつもの顔(アイデンティティー)を持っており、例えば結婚して子供の居る女性であれば、
夫の前では「妻」、子供の前では「母親」、学校のPTAでは「PTAの役員」、会社に行けば「課長」になり、
実家に帰れば「娘」に戻りますし、久しぶりの同窓会に顔を出せば「同級生」というアイデンティティーで
人と会い、話をします。
これは無意識に行っている為、気付きにくいことでもありますが、会社の上司に対して息子に接するような口のきき方はしませんし、
同級生に対して彼らの課長のように振る舞うこともないと思います。TPOや相手に応じて、無意識が整えるアイデンティティーから、
そのときどきに考え・感情が生まれ、表情・言葉・行動を通して表現していくことで、日々の人間関係と結果が生まれていくのです。
ちなみに、65億人の人類全員に共通するアイデンティティーとは何でしょうか?
自分自身をどう思うのか?という在り方には、役職や出身地など“意識できるアイデンティティー”もあれば、
幼少期に蓄積した自分自身に対する思い込みなどの“意識しにくいアイデンティティー”もありますが、
最も根深くて、人類全員に共通するアイデンティティーの要素とは何でしょうか?
個人個人の“自分自身をどう思うのか?という認識”から人生が形作られるように、
人類共通のアイデンティティーからすべての言葉・行動が生まれ、この社会が形成されているのですが、
人類全員に共通する根本的な要素とはいったい何なのでしょうか?
環境問題、テロ、宗教紛争、貿易摩擦など、人と人、国と国の間に生じる様々な摩擦・衝突・葛藤を
生み出している根本原因は、果たして何なのでしょうか。
それは「自分=人間である」というアイデンティティーです。
では、人間とは何なのでしょう?
次章では、「人間とは何なのか」について科学が解き明かしてきた事実を詳しく追っていきたいと思います。
第4章 意識の根源
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